アーティスト・ステートメント
榊原康範 私は、都市、文化、そして時間の層を横断しながら制作する画家です。日本に生まれ、東京で美術を学びましたが、私の制作は、東南アジア、インド、グアムとの長期的な関わりによって形づくられてきました。私の作品は、単一の国家や様式の伝統に属するというよりも、場所、歴史、意識の状態のあいだを移動することから生まれています。 私の絵画には、しばしば人の顔が描かれていない都市や風景が登場します。しかし、そこでは人間の存在が中心にあります。恐れ、孤独、記憶、喜び、そして生き延びる力は、建築、街路、光、影の中に刻み込まれています。私は都市を描いていますが、そこで明らかにしようとしているのは、人間の心理です。私たちの内面を形づくる不安定さ、傷つきやすさ、そして静かな強さです。 技法的には、私の作品は北方ルネサンス絵画の深い研究に根ざしています。油彩の層を重ねる技法や、卵テンペラの伝統から多くを学んできました。私は、時間、忍耐、蓄積を必要とする方法に惹かれています。こうした技法は、光が画面の内側から現れるような効果を生み、一つの情景の下に、さらに別の情景が潜んでいるような奥行きを与えてくれます。 同時に、私の制作は仏教美術と仏教思想からも強い影響を受けています。とくに、沈黙、瞑想、そして超越の感覚に惹かれています。私が仏教的なモチーフを用いるとき、それは宗教的な象徴というよりも、存在についての問いです。自由、無常、そして目に見える現実を超えようとする人間の欲望についての問いなのです。 東京、コルカタ、バンコクといった都市、そしてグアムのような場所は、私の作品に繰り返し登場します。これらの場所は、記録や資料として扱われるのではなく、歴史、記憶、現代の生活が交差する、生きた神話的な空間として扱われます。一枚の画面は、中心と周縁が同じ重みを持ち、複数の物語が共存する、パンフォーカスの場として機能します。 私は、流行や技術に動かされる絵画ではなく、時間によって支えられる絵画を作りたいと考えています。目指しているのは、耐えうる作品です。様式や道具が変化しても、百年後にもなお語りかける絵画です。最終的に、私の作品が見る人に、内面的で静かな自由へ向かう道を差し出すことを願っています。見る人自身の記憶、不安、孤独、そして強さとともに歩いていけるような空間を作りたいのです。
